『ひまわり』感想

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ジャンル ロリっ娘宇宙人同棲ADV
発売日 2007/12/31
ひまわり
評価点
78 / 100
最大瞬間風速 アクア(85/100)
総プレイ時間 17.8時間
主人公 7/10
お気に入り 西園寺 明香
ユーザビリティ 8/10 8/10
グラフィック 7/10 7/10
ムービー 7/10 7/10
主題歌 -
BGM 7/10 7/10
ストーリー 8/10 8/10
演出 6/10 6/10
感動 7/10 7/10
読後感 7/10 7/10

(評価点や作品に望むこと等については「レビューポリシー」をご参照ください。)


0. まずは一言

子供心を忘れなかった3人の大人がもたらした、希望と悲しみの物語。「ロリっ娘」との同棲だけに留まらず、SF設定を交えた謎解きと種明かしの妙は素晴らしかったです。惜しむらくは、テーマの明確な主張が弱かった所でしょうか。


Attention!!

この感想はゲームをクリアした人に向けて書かれています。
まだゲームをクリアしていない人が読むと、作品の面白さを損なうことがありますので、ご注意ください。

1. 作品全体について(ネタバレ小)

空から落ちてきたアリエスや幼なじみの明香との生活がとても楽しかったです。銀河やジョニーといった愉快なサブキャラクターたちも、時には笑わせ時にはお話を盛り上げてくれました。

ジャンル名とは裏腹に壮大なスケールで展開されるSF物語でもありました。RNAウィルスをギミックに用いた舞台設定や、その情報開示のタイミングが非常に巧く、胸をときめかせながら物語を楽しむことが出来ました。攻略順序が固定されていることもあり、ルート内のまとまりだけではなく、ルート間での調和が取れた物語が描かれていました。

  • SF物語

    SFを描くのではあれば、地球を脱出しなければならない必然性をより丁寧に描くべきです。したがって、あくまでも「ロリっ娘宇宙人同棲ADV」を描いているのでしょう。人口問題1つにしろ、2050年までに日本の人口が3億弱に達するとは思えません。


2. 個別シナリオやヒロインについて(ネタバレ大)

過去に囚われた人たちの物語。記憶こそがその人の本質であり、その記憶が現在の行動を規定します。だからこそ、心から愛した初恋の人を忘れることが出来ないのでしょう。その一方で、子供の頃からの夢は諦めるべきではないというメッセージも内包しています。

また、サブテーマとして、「視点が変われば物事の関係も変わる」こともたびたび描かれています。日本を中心とした世界地図、明香の名前の由来や、観測地による星座の見え方の違いなどです。最たるものは、アクアルートにおける「あおい空の奇跡」にまつわるシナリオでしょう。さらに、それは登場人物の性格的多面性においても同じ事です。英雄と謳われる大吾の内面や悪役である明の理想、ポケポケしたアリエスの計算高さなど、多くの場面で見られます。

  • あおい空の奇跡

    見方を変えれば物事は奇跡となりえるし、世界はこんなにも輝いている。

2.1. アリエス(8/10)/ ロリっ娘宇宙人同棲ADV

ポケっとしてプニっとした笑顔がとても可愛いアリエス。彼女を家族に迎えた2人の生活はとても楽しかったです。部長やジョニーのトンデモ言動にもたくさん笑わせていただきました。無難な学園ノベルの体を取った「ロリっ娘宇宙人同棲ADV」だったと思います。 

2048年に起きた高々度旅客機SA-DAN080型墜落事故の責任を感じ続けてきたアリエス。彼女の成果を示すために「ひまわり」の花火を咲かせたエンディングはとても綺麗でした。ここで、アリエスが報われるという意味では、アクアルートからの派生エンドである『向日葵』こそアリエスルートと呼ぶべきかも知れません。こちらでは、墜落事故の真実も知る事が出来ましたし、TIPS36において彼女はついに葵の代用品ではなくなりました。この終わり方がもっともその後の幸せが期待できそうです。 

『ひまわり』全体から見ると、この章は比較的あからさまな伏線を置いていくプロローグとなります。アクアの態度ならびにセリフは、その真意を知ってから読み返すとなるほどと思わせてくれます。『AQUA』をプレイした後に、すぐアクアルートへ進まないで、再びアリエスルートを読み返してみても面白いでしょう。

  • ポケっとしてプニっとした笑顔

    「ふははははは」と部長のまねをする企み顔のアリエスも最高に可愛いです。

  • 墜落事故

    演算子1つのミスで旅客機は墜落するし、遺伝暗号1つのエラーでヒトは死ぬのです。プラネタリウムのたった1つの穴が星空を台無しにします。

  • とても綺麗

    ひまわりの爆発をアリエスが悲観的に捉える可能性は否めませんが、明るい未来を期待したい気持ちでいっぱいでした。

  • 墜落事故の真実

    アクアルートにおいて、宗一郎の工作によりスペース・プレーンは意図的に墜落させられた事が明らかになります。アリエスの責任は、プログラムミスではなく、宗一郎から教わったプログラムに演算子1文字の誤りがあることに気付けなかったことにあります。

  • あからさまな伏線

    一見関係のなさそうな日常会話にも見落としが出来ない所があります。ミトコンドリアDNAの独立性や意識の制御の話題がルナウィルスの導入だったとは思いませんでした。

  • アクアの態度ならびにセリフ

    プラネタリウムに入る前に「星のあかりは儚いから…だから偽物で満足しようとする――まるで誰かさんみたいね」と答えるシーンはなかなか心に来ます。

2.2. second episode AQUA(7/10)/ どこまでも代用品でしかなく

前章エピローグにおける妹の名前がない記念碑から2ndオープニングまでのシークエンスには、とても引き込まれました。まさに、『ひまわり』はここからが本番のようです。舞台を宇宙ステーション「ひまわり」に移し、物語のスケールも大きく拡がります。ここで語られる天文部3人組による夢の行く末や、アクアたちの出生の秘密やルナウィルス関連の謎解きを大いに楽しむことが出来ました。しかし、惜しむらくは、大吾とアクアの同棲生活にあまり面白みを見いだせなかった所です。42歳のエッチなおじさんを見てそれほど楽しくなるわけもありませんし、アクアへの性的揶揄が度を超えていたのも要因の1つでしょう。

14歳のアクアは、自分のことを(研究材料ではなく)初めて1人の女性として見てくれた大吾に恋し、自らの居場所と考えるようになっていきます。「ひまわり」に侵入したテロリストや明から大吾に身を守られた彼女は、ひまわりを脱出しました。これも綺麗なエンディングではあるのですが、この希望的終幕を覆すのがひまわりの手法。英雄は互いに想い合っていた明香里のことしかしか頭にありませんでした。エピローグで大吾がアクアのことを忘れ、明香里として認識している事が明らかになった瞬間にはとても大きな衝撃を受けました。スペース・プレーンの墜落を止めることも適わず、ただ名前を最後まで思い出してもらえないことに打ちひしがれる悲劇はとても重いものでした。

  • 天文部3人組

    紅葉のことが一切語られない所を見ると、外伝『こもれび』の製作は当初の予定にはなかったようですね。そのため『こもれび』にはいくらかの不自然さはありますが、明香里の以外で重要な一面を見ることが出来るため多少の意味はあります。

  • 楽しくなるわけもありません

    大吾の1人エッチを目撃してしまったアクアが「孕まされる」と取り乱した時は大笑いしてしまいましたけれども。

  • アクアへの性的揶揄

    大吾を迷惑がるアクアの気持ちには同情します。

  • テロリスト

    宗一郎の手引きやその裏事情は『かげろう』を読みましょう!

  • 希望的終幕

    アクアの薬はどうするのかという問題がすぐに浮上します。ただ、それも大吾からルナウィルスが感染すれば解決なのかも知れません。

2.3. アクア(8/10)/ 奇跡を起こし続けなければならない2人

強気を装って必死に内面の弱さを隠しているアクア。どこか遠くを見ているかのようなアクアの横顔がとても可愛かったです。全てに決着を付けるアクアルートは、まさに『ひまわり』の山場でした。宗一郎がルナウィルスを根絶するために、500人の感染者もろともスペース・プレーンを墜落させたことが分かった時には戦慄が走りました。続くアリエスのアオイおねーちゃん復活要請と、アクアへの「幸せにならないでください」宣告まで目が離せませんでした。

代替であり偽物であった二人の恋愛は、いくつもの奇跡を経て本物になりました。しかしながら、アオイの代用品としてではなくアクアを受け入れた陽一に対して、アクアが大吾のことを忘れられたとはとても思いません。初恋を超えるため、この2人が仲睦まじく時を過ごしていくためには、今後も奇跡を起こし続けなければならないのでしょう。

  • アクアの横顔

    一方で、アクアルートに入ってから見られる正面からの立ち絵には正直違和感がありました。

  • スペース・プレーンを墜落させた

    アオイを使って自らの家族への情を試した宗一郎。もし陽一がルナウィルスに感染していることに気がついていたら、計画を中止していたのでしょうか。

  • アオイおねーちゃん復活要請

    えちぃシーンに何かしらの必要性があるのはとても嬉しいことです。

  • 「幸せにならないでください」宣告

    2年前の唯一の選択に対する責任の追及。この作品は、選択肢に対するメタ視点的セリフが多く、『AQUA』でのアクア(私に選択肢はないと思っていた)、アクアルートでの陽一(どちらも選べば良い)などが見られます。

2.4. 西園寺 明香(8/10)/ 全てを覆い隠したフィナーレ

2年前に知り合った幼なじみこと明香。ロリっ娘ではありませんが、何かと陽一の面倒を見ようとする彼女が1番好きでした。それにしても、明香が高校2年生にして20歳であったことには相当驚かされました。『AQUA』を正確に読み取っていればすぐに分かることなのですが、全く気付いていませんでした。お酒を飲むこと、そして、煙草を吸うことが20歳まで”生き延びられた”喜びとして描かれていることは興味深かったです。

明香ルートの好きな所は悪役であった明の深層部分が露わになるところです。宇宙を当たり前の世界とするために、大人になりきれないまま夢に向かってきた彼は悲劇の主人公でした。愛した明香里を失い、親友の大吾と分かれ、協力者の日向先生は離れていきました。彼の理想の高さと不幸には同情を示したいですし、明香たちへの不器用さには「萌え」に似た感情を覚えます。

この物語はあくまでも「ロリっ娘宇宙人同棲ADV」でした。ルナウィルスの事も、明香とアクアたちの血縁関係の事も全て忘れ、陽一(と明)が夢に向かって進んでいく希望を描いて、物語は大団円を迎えます。彼らに、人類を救うことは出来るのでしょうか。

  • ロリっ娘ではありません

    とはいいつつも、大人になる必要もなく子供っぽい所もあり、かなり童顔ですし、宇宙ステーションひまわりで誕生しているためジャンル名に反しているわけではありません。

  • 陽一の面倒を見ようとする彼女

    垂直感染者である明香は、ルナウィルスキャリアである陽一を遺伝子レベルで求めていただけなのかもしれません。このことはアクアルートで語られていますが、例えルナウィルスの影響があったとしても、その感情には嘘をついてはいけないものなのだろうと思います。

  • すぐに分かること

    明香里がつわりを2029/08/23に初めて経験する場面があります。(『AQUA』08/09におけるアクアの回想)

  • ルナウィルス

    記憶移植技術として人類に貢献する研究だと明らかになる一方で、それがもたらした悲劇については全く触れられません。

2.5. ひまわり

作品タイトルの『ひまわり』は、ジャンル名「ロリっ娘宇宙人同棲ADV」に相応しく可愛い名前です。向日葵という花からは一般に太陽を想像しますが、いつも太陽に同じ面を向けるという名前の由来から、むしろ月を象徴するものとして扱っています。主人公の妹(日向葵)、宇宙ステーション、月を目指す自作ロケットなどがその名を冠しているのは、なかなか面白い所です。

物語は、陽一の夢や想いがいっぱい詰まった名前「ひまわり」を娘に与えた所で閉じます。ラストの秋桜とひまわりの会話は、最後まで読者を引きつけてくれました。この含みを持ったエピローグは、続編をすぐに読まないわけにはいきません。

  • 陽一の夢や想い

    一方で、アクアにとって「ひまわり」とは悪夢を表す名前です。

  • 秋桜とひまわりの会話

    3年後にファンディスク『アクアアフター』の発売を持って完結したひまわりですが、もしこの続編がなければ、作品単体としては後味の悪い終わり方となっていたと思います。


3.1. 心にとどめておきたい言葉

怪談とはな、知ってる知らないではないのだよ
単に自らの経験の中でもっとも恐ろしい体験を話せばよい
ただし300%ほど脚色してな
雨宮 銀河
ヒトは自らが生きた証として、子供を残す
そして同じように、言葉を残す
言葉とは、ヒトの生きた証。 言葉とは――個人の記憶
そして名前とは――ここのヒトを定義する言葉だ
アクア
少なくとも俺は自分の遺伝子を残すために生きているつもりはない
俺が残したいものは――軌跡だ
俺の歩んだ場所までやってきてくれる誰か。その場所から先を目指してくれる誰か
そんな誰かを、俺は求めている
雨宮 銀河
偽物だから、僕たちは夢を見ることができる
夢を見ることさえできれば、僕たちは夢に向かって歩いて行くことができる
たとえそれが、どんなに遠くの場所でもね
日向 陽一

3.2. 関連項目

  1. 関連作品の感想
  2. 外部記事

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Last updated: 2013-02-02
First created: 2013-01-26