『Garden』感想

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ジャンル NVL
発売日 2008/01/25
Garden
評価点
72 / 100
最大瞬間風速 絵里香(80/100)
総プレイ時間 53.6時間
主人公 7/10
お気に入り 鈴村 あざみ
ユーザビリティ 8/10 8/10
グラフィック 8/10 8/10
ムービー -
主題歌 9/10 9/10
BGM 8/10 8/10
ストーリー 7/10 7/10
演出 7/10 7/10
感動 7/10 7/10
読後感 7/10 7/10

(評価点や作品に望むこと等については「レビューポリシー」をご参照ください。)


0. まずは一言

発売から5年経ったその日に、ついに開発凍結が宣言された本作。もし、更地となってそこに新たな庭が造られることがあったとしたら、そのときは大いに期待したいと思います。そう思うくらいには、まだ読みたいこと、知りたいことがありました。


Attention!!

この感想はゲームをクリアした人に向けて書かれています。
まだゲームをクリアしていない人が読むと、作品の面白さを損なうことがありますので、ご注意ください。

1. 作品全体について(ネタバレ小)

1.1. 複数ライター制による整合性の破綻

ライター間の連携が取れていないためか、ルート間あるいはエピソード単位での調和が取れていない部分が散見されます。せめて、キャラクター同士の呼び方や語尾、学園の仕組みくらいは統一して欲しいと思います。

物語自体は、幼なじみとの別れによって心に傷を負った主人公が絵里香達との触れ合いによって癒やされていくのを垣間見るだけです。やや固めの文章で書かれるそれは、大きな起伏も伏線を解き明かす楽しみもほとんどありません。お気に入りのヒロインだけ読み進めれば良いかもしれません。

  • やや固めの文章

    主に、メインライターであるトノイケダイスケ氏のもの。ダッシュ(――)を用いた注釈の入れ方が好みです。単純な面白さを犠牲にしている面もありますが、趣のある雰囲気というのも悪くないですね。

1.2. 幸せになれと願われた主人公

なかなか類を見ないほどにどん底な精神状態で登場するのが、本作の主人公こと神谷涼くん。登場して今すぐにでも自殺してしまいそうな姿には、本当に何があったのか心配になるほど。涼くんは暖かい学園の仲間と共に理想の箱庭で幸せになる事を恐れながらも徐々に前を向き始めます。

彼は異常なまでにヒロインたちに甘やかされ、多くの女性たちに慕われます。容姿が良く運動も勉強もできるという理由だけ納得しなければならないので少々辛かったです。

  • 自殺

    実際はそんな勇気も持っていなかったわけですけれども。屋上で瑠璃が背中を押すシーンは、わりと洒落では済まされないように思います。

  • 心配

    理由がないと何も出来ない主人公ですが、千夏を失った悲しみを思うとあまり大きな声で批難できません。

1.3. 豊富な立ち絵グラフィックと単独で聴きたいBGM

全体的に幼い容姿の人物が多いです。淡い色遣いで描かれたヒロイン達は可愛く、とても暖かみがあります。年間を通してのお話であるためか、髪型や服装の変化があり、その立ち絵のパターンはとても豊富です。

ヴォーカル曲はデモムービーで使用された『アイの庭』が秀逸であり、作品中で是非とも流して欲しかったです。BGMもピアノを基調とした楽曲がたいへん素晴らしかったです。惜しむらくは、日常シーンにおいてBGMの指定が場面に合っていない箇所が散見されたことでしょうか。

  • 豊富

    メインヒロインの絵里香は服装だけで12パターンもありました。

1.4. ユーザーを騙すかのような

お話をまとめきれなくなり「作品の整合性を保つ」ために削除されてしまった姫宮瑠璃と竜胆愛の物語。どのような仕様変更が行われたかは想像するしかないですし、CUFFS内部で何があったのかは知る由もありません。ただ、1つ思うのは、発売までに様々なことが読者のために出来たのではないかということ。少なくとも、発売日の翌日にルート削除を発表することよりは。

最後の修正(2010/01/22)で書き直された絵里香ルートには、次のような文章が冒頭に追加されました。

 それにしても、なんて惨めな光景だろう。
 どんな事情でこんな扱いを受けているのかはわからない。
 きちんと手入れさえすればさぞ美しい庭になるだろう、と同情を覚えさえする。
 しかし事情はどうあれこの庭が既に役目を終えていることは明白。
 もう死んでいるんだ。
 さっさと更地にするか、それが嫌なら手入れをし蘇生させるとかすればいいものを、なんだってこんな、無様な死骸をさらしたままにしておくような真似―

(『絵里香ルート(Ver3.00)』)

皮肉と自嘲に塗れたこの言葉こそが、すべてを自ら代弁しているような気がしてなりません。発売から5年経ったその日に、ついに開発凍結が宣言された本作。もし、更地となってそこに新たな庭が造られることがあったとしたら、そのときは大いに期待したいと思います。

  • 「作品の整合性を保つ」

    前述の通り、ルートごとに差違がありすぎて整合性を保てているとは思えません。

  • 書き直された絵里香ルート

    大筋の流れは変わらないものの、ホオズキ市、海水浴、学園祭など多数のイベントにリライトが入っています。ゴールデン・ウィークの柊家訪問では千夏の交通事故に言及し、夏休みには絵里香に両親のことを打ち明けるなど、重要なイベント変更もあります。陸上大会で絵里香を見かけていた可能性を示唆するなど、この世界の仕組みにも関わっていそうなエピソードもあります。


2. 個別シナリオやヒロインについて

この楽園は虚構か、それとも現実か

最愛の幼なじみを奪っていった理不尽で残酷な(現実)世界とは対称的に、主人公に抱えられたこの箱庭は現実逃避としか思えないほど優しすぎました。ヒロイン達はみんな主人公の一部分を写した鏡のようでありながら優しく接してくれます。彼女たちが心を許す過程(描写)が乏しく、特に絵里香や瑠璃にいたっては初対面の段階で涼を異様なまで甘やかしてくれます。この都合の良すぎる箱庭世界は、どうも説得力が欠けているのです。すべては、彼を癒すために(誰かによって作られた)虚構なのかと疑ってしまうほどでした。

  • 箱庭

    マニュアルの表紙絵のこと。Gardenとは、囲む(gher-)+楽園(eden)であり、本作タイトルはまさに「地上において天国に最も近い場所」ですね。

  • 説得力

    『水月』の雪さんや『さくらむすび』の紅葉のように、長い時間の共有によって作られた(作られていた)関係が匂わされるわけでもないので困ります。

  • 虚構

    幸せな世界に見せかけたバッドエンドというパターンですね。私たちが訪れたこの鳥かごは「哀の庭」なのか、それとも「愛の庭」でしょうか。

2.1. 星野 絵里香(7/10)/ 手に届く幸せ

(C) CUFFS
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「ですよん?」の語尾が可愛い絵里香。たとえ、両親の愛に触れられなくても、誰よりも愛してくれる涼の隣にいられればそれでいいよね、というお話でした。その過程で焦点となるのが幼なじみからの決別です。

絵里香は、彩ちゃんでさえ動揺させるほどに千夏によく似ていました。絵里香は千夏の代替物ではないと自他共に認めるまでの過程が色濃く描かれていて良かったです。「千夏が死んでくれて良かった」と涼に言わせ、幸せに塗り替えさせてしまうほど絵里香が魅力的だったのでしょう。特に、初えっち後に千夏の写真を見て、「絵里香とは別段似ているわけでもない」と言い、その心変わりに涙する場面は印象的でした。

涼と絵里香の2人が両想いとなってからは、エピローグまでずっとバカップルでした。人間離れしたいちゃつき振りや、恋の病で完全にネジが外れた涼のかっこ悪さは、いささか直視するのが辛いレベルでした。

ただ、愛し合う場面に心を動かされる場面が多かったです。まさに、愛を確かめるえっち(愛の証明としてのセックス)であり、初えっちの予約、えっち前のお風呂、初えっち の一連のエピソードは非常に良かったと思います。

  • 絵里香

    彼女のCVを聞いていると『ef』のみやみやを思い出さずにはいられません。

  • 初えっち

    主人公のロリコン具合はかなり酷く、「年齢に相応の代物はグロテスクで汚らわしいもの」「子どもみたいである方が美しいし興奮する、正義だ」という信念を持っていますからね。それでおしっこ好きなわけですから、もう「手遅れ」ですよ。

姫宮瑠璃

(C) CUFFS
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仕様変更によりいくら手を伸ばしても届かない星となってしまったもう1人のメインヒロイン。ふふー、と笑っている影で、何か重大なことを知っていそうです。それこそ、千夏の再現として、絵里香を夢として見せているのではないかと疑ってしまうくらいには。

柊彩花

「女の人の裸に興味があるなら自分に言ってくれれば」と、弟のために避妊具おび避妊薬を常備している本作中最強のお姉様。先を見通して秀英学園を進学先に選ぶ辺り、占い師としての才能(勘)も絶大なものがあります。

青葉千夏

大通りでトラックに轢かれる事故に遭ってしまう。即死だったのか、治療の過程で絶望し自殺したのかは不明。妹の明穂がいるはずなのですが、何故か本編には一切登場しません。千夏のお墓が荒れ果てていることから、青葉家の皆が事故にあったのかもしれません。

残された設定

主人公である涼は強く意識した先を予想する力を持っています。これは、単に勘が良いと言うだけにはとどまらず、相手が飲み込んだ言葉や心の言葉を聞くことが出来ます。これは、先を見通す彩ちゃんや、絵里香の勘の良さ、人の心が読める瑠璃とも密接に関連していると思われます。当初はどのように収束をつけるつもりだったのか気になる所です。

  • 自殺

    自殺はあざみルートの記述なので信用できないかも。ただ、事故の時に涼は一緒におらず、最後には千夏に嫌われてしまったと言っているので、自殺説も十分ありえると思われます。

  • お墓が荒れ果てている

    彩ちゃんあたりが代わりに掃除していてもおかしくない気がします。

2.2. 音川 小夜(7/10)/ 鳴かないカナリアの価値は

(C) CUFFS
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事故により両親を失い、歌うことが出来なくなってしまった小夜。才能を発揮できなくなった彼女は無価値として扱われます。涼の立ち位置との重ね合わせや対比は面白かったのですが、物語の着地点はよく分かりませんでした。最後に涼の前で、涼のためだけに歌ったのでしょうか。

加えて、物語を通して一切話さず、常に笑顔を崩さなかった理由が気になります。えっちしーんで嬌声が漏れていることから、失語症は精神的な(意識的な)もののように感じます。安易に声を取り戻してハッピーエンドで片付けられても困りますが、2人がもはや声が必要ないほどにコミュニケーションが取れている事も不思議です。

  • 対比

    走ることで思い出す/コンクールの発表衣装を着ることで思い出す

  • 笑顔

    えっちシーンでのジト目でちょっと怒った顔が可愛いですね。

  • 理由

    両親を奪った世界に対する復讐が答えの1つではあるようです。(千夏との重なりと、現実への反発)

2.3. 鈴村 あざみ(6/10)/ やりたいことを見つけよう

(C) CUFFS
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妹想いで愛くるしいあざみん。その可愛さは、しっかりした小学2年生と間違われるほど。クラス委員として準特待生として日々努力していて、涼とは絵里香達に対して怒りよりも呆れや諦めが上回る似た者同士です。

このルートは全体的に他ルートとの整合性が怪しく、諸設定だけでなく人間関係がメインルートと大きく齟齬があるため、違和感に苛まれ続けました。互いの呼び名、立ち位置、性格くらいは合わせて欲しいと思いますし、諸設定を考えれば絶対に言わないであろうセリフが多数存在します。特に、絵里香が地雷を悪気なく踏み抜き不快にさせ、瑠璃がアホの子ではなく単なるお馬鹿な子になっていました。2人とも心が読め、勘が良いはずではなかったのでしょうか。あざみと恋人になる時の雰囲気や姉妹愛にあふれたシーンはそれなりに良かっただけにとても残念です。

  • 妹想い

    そっくりな妹さんが可愛すぎます。学園祭でキスしてしまうシーンが大好きです。(あざみルートにて、妹と気づかず迷子扱いする割にはそっくりと言うよく分からない絵里香達)

  • 小学2年生

    彩ちゃんがこのような勘違いをするとは思えないので、恐らく冗談なのでしょう。

  • 諸設定

    学園祭が1日しかないこと。体育祭のチーム分けがクラス単位であること。(体育祭の最後のリレーは予定調和過ぎる展開で辟易)

  • 呼び名

    坂上が「絵里香さん」と発した時は、本当にどうしようかと想いました。夏の旅行で坂上と桜子が付いてくるというのも理解できません。涼が終盤で「ウケる」というのは素に戻りつつあるという好意的解釈も苦しいところ。

2.4. 春日 桜子(7/10)/ 遅咲きの桜は、その実健気でもあり

(C) CUFFS
(C) CUFFS

妹の嫌がらせにより精神を病んで休学してしまった「さっきゅん」こと桜子。罪の殻に閉じこもりたい彼女と涼は、誰にも触れられず自分だけを抱えて生きていくことを望んでいました。しかし、涼は(旧校舎の庭での出会いに想う所でもあったのか)図書委員会天文部の活動を通じて桜子に干渉し、彼女を悲しみの庭から抜け出させようとします。全体としては、千夏の代わりに走る理由になれるかというテーマを大事にしつつ、双子姉妹の物語をよく描けていると思います。

  • 図書委員会

    図書委員の決め方が理解できない所があります。くじ引きで涼が委員になっても日下部が委員になっていたり、あるいは涼が臨時図書委員として働いていたり。

  • 天文部の活動

    夏の旅行でのひまわりを見上げるシーンは、『水夏』におけるさやか先輩を思い出します。

2.5. 春日 撫子(7/10)/ 素が見えると、とても可愛いですよ

(C) CUFFS
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撫でられるのが大好きな「なーこちゃん」こと撫子。秀才であった彼女は、天才である姉に子どもの頃から負けっぱなしでした。そして、何より彼女のプライドを傷つけたのは、すべてを姉から(妹を溺愛するが故に)譲られ続けたことでした。彼女の内面を知るようになってからは彼女の心情に惹かれ、性格の悪い素振りがすべて(涼に対しての)虚勢に見えて可愛く見えるようになります。

  • 撫子

    物静かな桜子に、辛辣な言葉を浴びせる撫子。どちらもCV:まきいづみさんで楽しいです。

  • 彼女の心情

    試験や水泳における姉の手抜きに文句を言いたくもなるし、許せなくもなるのも分かります。なお、「手抜き」は涼とも関係するワードです。

  • 虚勢

    デートでの以下のセリフがお気に入り。「結婚が契約なら、付き合うってのはたぶん口約束。恋人だって胸を張るための。でも、ほんとに好き合ってるのなら、そんな約束はいらない気がする。そんなことは、自分だけがわかっていればいいってことよ。」

2.6. 竜胆 愛(7/10)/ 好き→キス→好き……のエンドレス・ループ

(C) CUFFS
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発売から半年たって追加された愛ちゃんルート。羊の愛先生と「しりとり」だけで、よくもここまで押し切ったと思います。どちらが夢で現実か、何も告げずに去った親友など、過去作を匂わせるようなタームもありますが、基本はただただ甘いだけの空間です。

涼の最大の枷であった走ることを乗り越えたのがこのルートでした。体育祭のリレーで千夏の過去を振り切るシーンは、この作品最大の名場面だと思います。スタート地点にて笑顔で手を振る絵里香に千夏を重ねて、涙をこらえて手を振り返す涼にとても感動しました。

  • 愛ちゃん

    「りんどう まな」が読めなかった私です。



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Last updated: 2013-06-15
First created: 2013-06-08