『ef - the latter tale.』感想


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ジャンル インタラクティブ・ノベル
発売日 2008/05/30
ef - the latter tale.
評価点
77 / 100
最大瞬間風速 ミズキ(80/100)
総プレイ時間 22.3時間
主人公 8/10
お気に入り 雨宮 優子
ユーザビリティ 9/10 9/10
グラフィック 9/10 9/10
ムービー 9/10 9/10
主題歌 8/10 8/10
BGM 8/10 8/10
ストーリー 8/10 8/10
演出 9/10 9/10
感動 7/10 7/10
読後感 8/10 8/10

(評価点や作品に望むこと等については「レビューポリシー」をご参照ください。)


0. まずは一言
 「夢だけはあきらめちゃダメだからね」というメッセージを、強い意志の美しさとともに描いたインタラクティブ・ノベル。人と人の繋がりが生み出す幸福の連鎖と奇跡は、とても綺麗なおとぎ話でした。一つの到達点に達した表現手法で描かれるそれは、マスターピースとして十分誇れるものでしょう。
  • 夢だけはあきらめちゃダメだからね
     前作『はるのあしおと』より。夢を持つ事と追い求める事、そして絶望からの救済については前作から続くテーマです。

Attention!!
この感想はゲームをクリアした人に向けて書かれています。
まだゲームをクリアしていない人が読むと、作品の面白さを損なうことがありますので、ご注意ください。

1. メッセージをどのように受け止めるか
 前編の青春物語から比べて不幸設定の度合いが非常に増しています。読み進めるほど暗く重くなる物語は、楽しさや萌えとは対極にあると言えるかもしれません。しかし、この美しい世界観で描かれる純愛、そして成長物語はとても魅力的でした。

 演出面は前編に引き続き見事の一言。心を揺らすムービーやBGM、場面に引き込む優子やミズキのCVなど素晴らしいものばかりでした。その中でも、エンディングのタイミングは相変わらず反則級です。
  • メッセージ
     提示されるメッセージに対し、自らの経験・人生観と照らし合わせてどのように返すのか。そんなインタラクティブ性。
  • エンディングのタイミング
     たいていの作品は「終わり良ければ総て良し」となるわけですので、非常に重要ですよ。

2. 個別シナリオやヒロインについて
 夢を叶える事と強い意志の大切さ、それが『ef - a fairy tale of the two.』のテーマ。そこには、夢を叶え続けたり絶望から未来を掴み取ったりする主人公とヒロイン達の強い意志が描かれていました。次のセリフは本作のテーマを最も端的に表しています。

夢をかなえるには、まず、夢そのものがないといけない。
こうなりたい、ああしたい、あれがほしい
―――自分のために、誰かのために。
そういう意志、想いを抱くことが、
なによりも大切なんだそうです。
とても単純なことですが、一番難しいことです。
そして、その想いを諦めずに、ずっと想い続ける。
それが、夢を叶える第一歩になるんだそうです。
新藤 千尋

 この言葉は蓮司が実践し、千尋が伝え、ミズキの手によって再び久瀬のもとに帰ってきます。このような人の繋がりこそ『ef』が描いた2つの街を舞台に描きたかったものでした。夕と優子の再会は、教会で幸せを分け続けた2人のための、人と世界の繋がりの連鎖による奇跡です。想いも幸せも巡り巡って自らの元に届く。周囲への優しさの大切さを描いた『ef』はとても綺麗なおとぎ話でした。
  • 強い意志
     "It is a story of the will."とのこと。夕をはじめとした揺ぎ無い意志だけではなくて、優子の遺志を受け継ぐ夕とミズキの物語とも言えます。
  • 人と世界の繋がりの連鎖
     4つの物語どれか1つ欠けても夕と優子の物語は成立しえませんでした。OPムービー(前編EDムービー)で(助けてと書かれた)紙飛行機が届くまでの場面の意味がここまできて繋がります。
  • 奇跡
     別れと再会の原因を作った未来(ミズキ)を赦し、また奇跡の再会を果たしても別れることが出来る夕は、本当に強い人物なのだと思います。
2.1. 新藤千尋(7/10)/ Chapter 3. "Terminal in the world."
(C) minori
(C) minori
 13時間の鎖に縛られ、人生の傍観者にならざるを得なかった千尋ちゃん。彼女がいかに理解を超えた存在であるかは、怖さを感じてしまうほどにその行き詰まりが丁寧に表現されていました。彼女の「理解できないと思います」という言葉に込められた想いは、寂寥や絶望などの言葉では表せません。夢であった小説を書き上げ、蓮司の負担になりたくないと別れる場面は、千尋の想いのせめぎ合いを想像すると胸を打たれます。蓮司が小説「箱庭」を完成させ、(お互い知った上で)もう1度名前を聞くところからやり直す終幕はとても綺麗でした。

 なお4章にて、半年をかけた千尋と蓮司の物語は1つの解答を示します。蓮司は大切な千尋の思い出を小説に残すことにしました。記録でしかなかった想いを記憶として共有してくれる。そんな彼を千尋は心を決めたのでしょう。
  • 人生の傍観者
     この『ef』という物語はまさに傍観者として読むことになりますが、ここに何か示唆があるのかもしれません。
  • 千尋
     上目遣いで覗き込む彼女がとても可愛いです、にんにん。なお、「ビームなんて出ません」については是非ドラマCD4巻の時代劇を聴いてほしいです。
  • 怖さ
     キスをするか否か、その選択の重さが際立っていました。
  • 小説に残す
     これと同時に「自分の力だけでなんとかしようなんて、うぬぼれる必要はない」という発言があります。すみれさんも「迷惑は……どうやってもかかるものだけど、必要以上にはかけないように」と言っており、(後に出てくる)夕くんの考え方とは対照的です。
  • 共有
     世界と繋がっていたいという想い。1章における紘とみやこによる体育館での会話にリンク。なお、「千尋が隣にいるだけで真新しい景色に思える」「素直になるところを間違えている」など、蓮司のセリフにもみやこと重なるところは多いです。
2.2. 羽山ミズキ(7/10)/ Chapter 4. "Angel's holiday."
(C) minori
(C) minori
 いつも眩しい笑顔を周囲に振りまいていたミズキちゃん。その裏には一家心中(未遂)、優子の死を乗り越えてきた過去がありました。彼女の遺志を引き継ぎ再び誰かを笑えるようにするために、彼女はあんなにも笑うのです。そんな彼女ならば、久瀬に「幸せだった」と言わせることが出来るかもしれません。

正しさと愚かさ、強さと弱さ、夢と現実―――
そういうのは多分、羽のようなものなんです。
1枚だけじゃダメなんです 。2枚が揃うことで、本当に羽ばたくことが出来るんだと思います。
だって、ひとりじゃ寂しいからこそ、人は誰かを求めることが出来るんです。
羽山 ミズキ

 ひとりでは辛い道のりも、つないだ手を離さなければきっと乗り越えられる。長い回想明けに待つミズキの宣誓は、とてもカッコいいものでした。夢をかなえるために意志を抱くことが第1歩であるならば、その歩みを支えるのはきっとこの2枚の羽根(悠久の翼)の役目なのでしょう。
  • 優子の死
     その心の傷が完全に癒える様子はSet Changeムービーにて心象豊かに描かれています。街を覆った雲が晴れて雨は止み、教会を振り返らずに彼らは未来に向かって歩み出します。
  • 再び誰かを笑えるようにするために
     そんな想いの連鎖。
  • 幸せだった
     夕くんと優子のように、これも客観的にみると幸せとは言えない状況です。その状況を分かっていながらミズキの背中を押す大人たち。彼らが正しいのか間違っているのかは難しい問題です。  
  • 長い回想明け
     ここまで長時間にわたると夕と優子の物語を読みたくなってしまうため、プレー中はミズキと久瀬の話が邪魔に感じてしまいます。
  • 2枚の羽根
     すべての強い意志が弱さの上に描かれているからこそ、彼らがカッコよく見えるのです。(例えば、夕が妹の腕時計を大事にとっておいた場面、マフラーをポケットに入れていたことなど。)また、OPムービーの最後で夕が手にする1枚の羽根は、ここでいう2枚の羽根の片方を表しているのでしょう。
2.3. 雨宮優子(8/10)/ ef - a fairy tale of the two.
(C) minori
(C) minori
 いつも笑顔でひねくれた冗談を言っていた優子。前編の様子からは想像もできない程の不幸を彼女も背負っていました。震災で母を失い、引き取られた先で義兄から凌辱を毎日受け、最後には交通事故に遭い亡くなってしまいます。誰もが口をそろえて不幸な人生だったと言うでしょう。

 しかしながら、彼女は今際の際に「死にたくない」と神に祈り、再会した夕に「幸せでした」と告げました。再び笑えるようになり、前へ歩んでいこうとした優子。未来に優しい声を掛けた彼女は、たしかに幸せだったのでしょう。客観的な彼女の幸せを望むのは、優子があの最悪な状況から再び立ち上がった強さに惹かれるからです。奇跡を受け入れるのも、妹と優子とを失っても夕がもう1つの音羽(あるいは教会)をオーストラリアに作り上げた強さがあるからに他なりません。

 2つの音羽で紡がれたおとぎ話。それは、多くの絶望を経験しながらも学生時代から夢を実現するまでを描いた人生でした。
  • ef - a fairy tale of the two.
     寄り添う2文字efとtwoという1単語に様々な意味が込められている良いタイトルでした。2つの街、2人の物語、重なる手など。1番大きいのは、物語は1人では生まれない、ということでしょうか。
  • 不幸
     絶望からの救済といった色合いが強い『ef』の物語。幸せとは何かを問われているのかもしれません。
  • 凌辱
     夕と明良の、妹へ想いの表現の仕方の違い。夕くんに復讐心を抱くのは分からなくもないですが、それは夕くんが本当に悪いのでしょうか。
  • 死にたくない
     本作最高の名場面か。もし、心から死にたくないと願えるのであれば、それは決して不幸ではありません。
  • もう1つの音羽
     余談ですが、障害をかかえる千尋を受け入れるにあたって、もう1つの音羽はいくつか都合がよい点があります。
  • 伏線
     読者を驚かせる壮大な仕掛けだとしても、強さの表現としての意味の方が主でしょう。異常なまでの伏線の回収をする物語でした。

3.1. 心にとどめておきたい言葉

人間は良いことを思いつくと浮かれる。
そして、だいたいにおいて良い考えというのは、
“自分にとって都合の良い考え”である場合が多いのだ。
麻生 蓮司

想定しうる読み手が楽しみ、共感、あるいは反発し、笑ったり泣いたり怒ったりする
―――立ち位置やエネルギーが変わるような話を書くべきだ。
それが物語の本質。書き手の本質。力だろう。
麻生 蓮司

昨日より今日は、いい日かも知れない。
今日より明日は、もっといい日かも知れない。
ハッピーエンドを信じてみよう。
麻生 蓮司

流されるのが嫌なら。
自分の望む生き方を、意思を突き通していきたいのなら―――
選んで、前に進むんだ。
火村 夕

3.2. 関連項目
  1. 関連作品の感想
  2. 外部記事

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Last updated: 2012-06-20
First created: 2012-03-13