『もしも明日が晴れならば』感想

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タイトル もしも明日が晴れならば外部サイトへリンクします。
ジャンル アドベンチャー
発売日 2006/02/24
もしも明日が晴れならば ~リニューアルパッケージ~
評価点
68 / 100
最大瞬間風速 つばさ(80/100)
総プレイ時間 38.6時間
主人公 4/10
お気に入り 野乃崎 つばさ
ユーザビリティ 7/10 7/10
グラフィック 8/10 8/10
ムービー 7/10 7/10
主題歌 7/10 7/10
BGM 7/10 7/10
ストーリー 6/10 6/10
演出 7/10 7/10
感動 7/10 7/10
読後感 7/10 7/10

(評価点や作品に望むこと等については「レビューポリシー」をご参照ください。)


0. まずは一言
 もしも人生にロスタイムがあったとしたら。幽霊となって帰ってくる物語ゆえに死の扱いは軽めですが、感動したり綺麗だなと感心させられたりする場面も所々にありました。しかしながら、主人公や一部のヒロイン達の言動に嫌気が差す部分も多く、全体としては思うように楽しめませんでした。

Attention!!
この感想はゲームをクリアした人に向けて書かれています。
まだゲームをクリアしていない人が読むと、作品の面白さを損なうことがありますので、ご注意ください。

1. 作品全体について(ネタバレ小)
1.1. 幽霊となって帰ってきた
 急死した主人公の恋人が幽霊となって帰ってくるところから物語は始まります。その前提からやや都合が良い場面が散見されるものの、描かれた去る者と残される者の2度目の別れには、綺麗だなと感心させられたりする場面も所々にありました。

 本作は共通シナリオ5章+個別ルート1章の全6章構成であり、共通部分の比重が高めに作られています。登場人物達の日常は、確かにその「キャラクター」を作り上げているものの、面白さの点から言えば物足りないと言わざるを得ません。しかしながら、共通部分の各章には個別シナリオに回してもいいような山場が多数用意されていました。ただし、(個別シナリオも含めて)章冒頭のモノローグや視点変更であっさり重大なことを明かしてしまう場面も多く、伏線の積み重ねを楽しみたい人には不向きかも知れません。行間から彼女たちの心情を想像し、何故そのような行動に至ったのかを感じながら読む物語なのでしょう。

 学校行事(文化祭)の他、部活動や登下校などのイベントも多数あり、一途な恋愛と嫉妬を描いた純愛物語でした。
  • 共通部分
     共通部分である程度プラス評価でないと、結末まで読んでもおそらく楽しめないと思います。
  • 文化祭
     共通4章までマイナス評価だったところを救ったのが5章の学園祭でした。
1.2. カズちゃんが大大大嫌いです
  本作の主人公ことカズちゃんですが、彼ほど苛立たせる才能に恵まれた主人公は珍しいかも知れません。著しく鈍感であることは諦めるとしても、何も出来ない癖に他人の事情に介入し邪魔していくのはとても不快です。加えて、彼のデリカシーのなさは、怒っているヒロインに素で「生理?」と幾度も問いかける程です。どうして彼がこれほどまでに女性に好かれているのか理解に苦しみました。

 また、これはテキストの書き方の問題でもありますが、主人公のモノローグが過去形で締められる場面が多数見られることも気になります。これは、彼の発言が言い訳じみて聞こえてしまうだけではなく、主人公達の回想物語であるかのようにも受け取れてしまうレベルです。
  • 何も出来ない癖に
     物語は全て、明穂や他のヒロインの行動力によって進行していきます。
  • 女性に好かれている
     顔の良さや学業成績の良さ、あるいは母性本能が刺激されるとかでしょうか。それとも、主体性の無さを優しいと勘違いしている面が強いのでしょうか。
  • テキストの書き方
     さらに言えば、物語の登場人物としての立場を理解しているかのような、何回かあるメタ的発言が気に触りました。ついでに挙げると、主人公と誰かと会話しているときその周りにいる人たちの存在や時間の流れを表現し切れていないため、仮想世界を作り上げることが出来ていません。「ふたつづつ」など誤った表現も多数あります。
  • 回想物語
     夏の想い出(残滓)を綴った物語という意味では正しいです。なお、明穂が幽霊となって帰ってくる世界(夢あるいは妄想)を精神不安定の主人公が作り出していたとしても、それはそれで面白いかも知れません。
1.3. 淡くて綺麗な絵と音楽と
 くすくすさん原画の淡い立ち絵はとても可愛かったです。後ろ向きの立ち絵を用いた演出も登場人物の表現手法の幅を広げていました。キャラクターの移動に合わせてCVをステレオ再生させたり、地の文でセリフをBGMの用に使用していたりしたことも良かったです。

 音楽については、主題歌2曲ならびに挿入歌「凪」などのVocal曲がとても良かったです。メロディや歌声もさることながら、歌詞が本編によくリンクしていました。弦を使った室内楽のようなBGMも聞いていて心地よいものばかりでした。「虹を探そうよ」や「命を懸けて」などがお気に入りです。
1.4. スキップ速度の改善を
 システムインターフェイスは、作品を遊ぶにあたって困ることはありません。しかしながら、共通ルートが長い作品にしてはスキップ速度が遅すぎるでしょう。また、バックログに発言者のアイコンが表示されるのは良いことだと思います。ただ望むなら、立ち絵の表情に合わせて変えて欲しかったです。
  • スキップ速度
     2012年10月発売のリニューアルパッケージ版では改善されているそうです。

2. 個別シナリオやヒロインについて(ネタバレ大)
 ヒロインが自らの存在価値(あるいは、誰かに好きになってもらえる資格)について想い悩むお話でした。サブヒロイン達は明穂によって、メインヒロインの明穂は主人公との絆の強さによって、それぞれ肯定されました。

 最愛の者との別れを題材にしてはいるものの、死生観については軽めの扱いです。1つだけ言えるのは「お別れは、最後には笑って」でしょうか。

 共通ルートにおいて、4.5章は完全に無用のものでした。最愛と人との別れを感動的に描こうとする物語の中で、主人公がヒロイン達を公然と猥褻して回る閑話が必要となる理由が存在するのならば、是非にとも教えていただきたいと思います。
  • 閑話
     無駄話の意。えっちな本の返却は行われたのでしょうか。こういったエピソードをどうしても書きたいのならば、ファンディスクのおまけシナリオにでも回してください。
2.1. 香坂 彩乃(7/10)/ 不遇な委員長
(C) ぱれっと
(C) ぱれっと
 首にぶら下げたホイッスルがトレードマークの委員長。主人公に何度声を掛けても袖にされてしまう彼女は微笑ましくもあります。明るくフランクな性格は心地よく、主人公に恋する気持ちが見え隠れする彼女が、ヒロインを含めた5人の中で1番魅力的な人物でした。

 彼女のシナリオは非常に短いものの、最後の一言には大きな衝撃を受けました。

アタシは香坂彩乃! 委員長なんて名前じゃない!
香坂 彩乃(Chapter 5. "Dance with the lovers")

アタシのことを見てと訴える彩乃。このあと、明穂シナリオで描かれたように、彩乃が主人公を支えていくのでしょう。彼女なら悲しみに囚われた彼を立ち直らせることが出来るかもしれません。語られるべきではないことなのかもしれませんが、是非とも結末まで見たかったと思います。
いちばん綺麗な終幕(明穂 normal end)
 この世界に留まる理由や意義に迷いを感じ、徐々に薄くなっていった明穂。しかし、そんな彼女の寂しさに、最愛のカズちゃんだけは気付いてくれました。ずっと愛していたことを伝えながら笑って成仏することが出来た明穂。この別離が最も綺麗で美しい終幕だったと思います。
  • ホイッスル
     使用されたのはケーキ屋さんに行くときの1回切りでした。本来は演劇部で常用しているのでしょう、きっと。
  • 委員長
     公式紹介で「成績優秀で生真面目な優等生タイプ」とありますが、その様な印象はあまり抱きませんでした。少なくとも、成績は良いわけではないです。 
  • 袖にされてしまう彼女
     男友達の東は、そんな委員長をからかう役目しか与えられませんでした。もしかしていらない子? 
  • 明穂シナリオで描かれた
     つばさシナリオにて、彩乃が誘惑しているところにつばさがお茶を運びに来るシーンは予定調和でしたが、明穂シナリオでの「帰ってくれ」はかなり可哀想。ところで、同じ大学に行こうとするのは構わないですが、音声付きで「H大だったわよね?」と略称でもなさそうな仮名で読み上げないでください。 
  • 徐々に薄く
     1周目の段階では、薄くなる要因として霊力の自然消耗よりもこの世界への執着具合の方がより影響力があると思っていました。 
2.2. 野乃崎 つばさ(7/10)/ お気に召すままに
(C) ぱれっと
(C) ぱれっと
 何かと不遇な妹のつばさちゃん。才能がないというよりも努力の仕方が間違っているのでしょう。お兄ちゃんの斜め後ろにそっと付いてくるとても可愛い妹でした。CVのみるさんもお疲れ様でした。

 つとめて笑おうとしていたつばさちゃんの素顔は、姉に対するコンプレックスの塊でした。常にお兄ちゃんの隣にいた優秀な姉に抱いた劣等感と嫉妬。そして、姉の死を悲しみつつもそれを僅かでも喜んでしまった醜さに対する自己嫌悪。さらには、姉が別れを告げ応援に回る前に体育館倉庫で情交を結んだ罪悪感。6章において情緒不安定に陥ってしまう彼女の葛藤は共通3章の再燃ではありますが、彼女の極度のコンプレックスには一定の理解を示せますし、思い悩む姿にはそれなりに惹かれました。

 つばさによる明穂乗り移りの迷演技は若干の疑問が残るものの、おおむね良かったと思います。演劇部の公演で主演を演じきった共通5章の意味付けと、完全な自己人格否定というコンプレックスの発現を両立させていました。これに続く、夕日が沈む海岸におけるつばさと明穂の背中合わせの再会が、この作品で最高の名場面でした。成仏したと思われていた明穂がつばさを優しく諭すシーンにはとても感動しました。
  • 不遇
     不遇とは「才能を持ちながらもめぐりあわせが悪くて世間に認められないこと」を意味します。公式紹介に「才能に恵まれていないため、イマイチ努力が実を結ばない不遇な境遇」と書いてしまう辺り、もはやこのライターの文章を肯定的に読むことは出来ません。 
  • 努力の仕方
     計量カップも使わずうろ覚えのレシピで失敗料理を作るのはどうかと思います。 
  • 迷演技
     共通4.5章と比較するとCVはつばさのままであり、明穂の乗り移りをミスリードと捉える読者はいないでしょう。しかし、明穂が乗り移ったと思い込み無意識レベルで姉を演じているのか否かは少し迷いました。
  • 疑問
     この演技は主人公が見ていないところでも行われていたのでしょうか。どちらにせよ、珠美から重要な参考意見を聞くイベントがあるのが自然に思えます。一行で時間を飛ばすくらいならば、学園を休むか授業日ではない日程を選べばいいのですよ。
  • 意味付け
     素朴な疑問ですが、つばさが園芸部ではなくあえて演劇部を選んだのは何故でしょう。納得がいく理由が明示されないため、結末から逆算して作られたような気がしてしまいます。
2.3. 湊川 珠美(7/10)/ 新しい「義務」
(C) ぱれっと
(C) ぱれっと
 日本刀を振り回すだけではなく料理も裁縫もこなせる珠美ちゃん。後ろ向きに振り返る立ち絵が可愛いですね。初めはつばさの最も傍にいる男性として主人公を毛嫌いしていましたが、彼に好意を持ち始めてからは2人きりになると妙にデレッとするところが可愛かったです。

 たまちゃんシナリオにおいて最初で最大の見せ場は、待ち合わせの公園でたまちゃんに詰め寄るつばさでした。

えへへ…、嫌いに決まってるよ。だって、泥棒猫だもん
たまちゃん、お兄ちゃんから、身を引いてくれる?
野乃崎 つばさ(Chapter 6. "My Duty")

結果を決めて臨んだ大喧嘩。つばさは、親友だからこそ本音でたまちゃんと向き合い、嫉妬を乗り越えて彼女の恋を応援したのでした。

 そして、もう1人本音を明かした人物がいました。明穂はたまちゃんへの嫉妬を抑えきれず、赤黒い蛇を生み出す怨霊となってしまいました。つばさや千早と違い、互いに負い目もなく全力で向き合ってくれる珠美ちゃんだからこそ、良い姉を演じる必要も無く素顔を見せることが出来たのでしょうか。

 少し勿体ないと思ったのは、拝み屋と言う設定をシナリオの中で活かし切れていないことです。無理矢理にでも成仏させないと碌な事にならない、と辛そうな顔をしながらも義務だと言って鬼切りを続ける理由は何だったのか。そして、ずっと一緒にいられるわけではないと人付き合いを避けるようになった原因は何処にあるのか。主人公が優しさに見せかけた我が儘でたびたび除霊を邪魔する過程で、是非とも何か反定立を打ち出して欲しかったです。
  • 最大の見せ場
     そのため、このイベントが終幕とほとんど繋がりがないことに若干哀しみを感じます。
  • 互いに負い目
     つばさや千早は、(責任の所在はともかく)明穂の存在によって心に自己否定という影を負っています。一方で、珠美は明穂と繋がりが小さく彼女自身の悩みにも本質的には関わりを持たない存在でした。なお、ラストには携帯メールという手法で珠美ちゃんの救済を試みました。自己に関わったものに対するお節介なのか、それともカズちゃんの幸せを願ってのものか。おそらく両方なのでしょう。
  • 碌な事にならない
     共通1章より。4章は碌なことになったのであろうか。ちなみに、榎本親子の別れは少し感動しましたけど、実くんは大嫌いです。子供とはいえ悪ふざけ(ポルターガイスト現象)でかなり危険な騒動を引き起こしていますので。
  • 人付き合い
     つばさに友達以上の関係を迫ったり主人公とバカップルになったりするのも、諦めていた暖かさを手に入れた反動なのでしょう。極端すぎますけれども。その意味では、エンディング後に続く新しい「義務」が幸せをもたらすかはかなり疑問です。
  • 除霊を邪魔する
     毎回と言っていいほど邪魔しますが、共通4章で怨霊と分かった実の成仏を止めたときは許せませんでした。さらに、怒っているたまちゃんをからかうような発言が続き、苛立ちは我慢の限界ギリギリでした。これは、一連の妨害が明穂の除霊に繋がっていた程度では補いきれません。
2.4. 千早(7/10)/ 贖罪を重ねて
(C) ぱれっと
(C) ぱれっと
 舌っ足らずで言葉足らずの千早ちゃん。謝罪を繰り返すだけで話が先に進まない彼女との会話には相当辟易させられました。加えて、遠慮がちな性格故に却って周囲に迷惑を掛けているところも耐えなければならないところです。しかしながら、6章にて千早の過去を垣間見て真実(イツキの病死)を知ってしまうと、その罪の意識が理解できてしまうが故に、遡って許したくなってしまう気持ちもあります。合歓の木の前で主人公が謝罪し約束を果たしに丘を登る終幕は悪くなかったです。

 千早の嫉妬によって明穂が病死してしまった重大な事実は、共通2章冒頭の回想シーンであっさりと明らかになります。そのため、この章でのポイントは明穂がどうして千早をあそこまで簡単に許すことが出来たかに尽きると思います。
  • 呪いが嫉妬という制御しがたい感情に起因すること
  • 疫病神としてもたらした死に千早自身が非常に苦しんでいる事への同情
  • すでに抱いていた千早への好意
  • 良い姉を演じる必要性
  • カズちゃんと一緒にいるためには、誰かを恨んで怨霊になってはいけないこと
  • 幽霊にとって話し相手は非常に貴重であること
いくつか考えられることはありますが、それはあくまでも論理の上であり心の動きとはあまり言えません。すでに死亡してから二月になるとはいえ、想いが通じ合いこれから楽しい夏休みを夢想したところで病に倒れた者が、この真実を知ってあっさり納得できるとは思えません。結局のところ、明穂は彼女自身の中だけで納得してその想いを明確には語りませんでした。その胸の内を明らかにしてくれなかったことは、非常に残念に思います。

 なお、カズちゃんが許したのは単に明穂が許したからで基本的に十分ですし、イツキの転生といった要因も含まれるのでしょう。一方で、つばさは呪いの事実を知らず千早をただの話し相手として紹介されているように思います。
  • 舌っ足らず
     「です」が「れす」に聞こえるほど。まきいずみさんの声は大好きですが、謝罪の言葉を繰り返すだけの千早にはあまり好感を抱けませんでした。
  • 千早
     主人公とともに学園内の食堂を利用していても何のお咎めもない時点で、この作品のシナリオやテキストの空間表現に期待するのは諦めました。
  • イツキの病死
     負い目が明穂の死だけではなかったというのは、少なからず良かったと思います。
  • 謝罪
     500年前の約束を忘れ明穂の好意を目の前で受け入れたことは、彼にとって罪なのでしょうか。 
  • あっさりと
     やはり、2章の終盤までこの事実は取っておくべきです。 
  • 嫉妬
     500年越しの想い人を奪われた故の嫉妬であることを知っていたら、明穂が千早の想いを理解してしまうことは容易そうです。 
  • 非常に貴重
     カズちゃんと言葉が交わせるようになるまでの1ヶ月以上を明穂は孤独に過ごしていました。 
  • 胸の内
     幽霊に行動原理を求める時点でどこか間違っているのかも知れません。 
  • イツキの転生
     転生を原因に考えて良いならば、他に千早を愛していた人物(例えば千早の母など)の生まれ変わりであれば、彼女を無意識レベルで許せてしまうのかも知れません。そして、この視点は明穂の母性にも繋げることが出来ます。その母性に主人公は惹かれていきました。 
  • ただの話し相手
     それ以上に心配なのは、つばさが呪いあるいは厄の制御ミスにより殺される可能性を明穂や主人公が何処まで意識していたのかと言うことです。珠美からもらったお守りの力を信じ切っていたとしたら問題です。 
2.5. 野乃崎 明穂(7/10)/ 赤い糸で約束された再会
(C) ぱれっと
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 園芸部の幽霊部員となった明穂。必要以上に主人公へ戯れに話しかける彼女には本当に困り果てました。主人公の対応の下手さに苛立ちましたが、それ以上に困った顔見たさにちょっかいを出す明穂には非常に大きな煩わしさを感じました。そのため、たびたび見られる彼女が寂しさを見せる場面でも深く同情することが適いませんでした。

 サブヒロイン達(つばさ、珠美、千早)のシナリオでは、自分自身を嫌っていた彼女たちの恋する資格を肯定し、カズちゃん達が幸せを得るために手助けに専念しました。好きな人の幸せを願うことは愛すること。ED主題歌「あなたを照らす、月になりましょう」が歌うように、明穂は月のように見守り続けるのでしょう。

 明穂の未練はただ1つ、ずっとカズちゃんと共に在りたいということでした。あまりにも近くにいた2人はお互いに補完しあい、傍にいるのが当たり前な「2人で1人」の関係を続けてきました。鈍感な主人公が明穂の寂しさや望みに誰よりも早く気付ける辺りは流石であり、とても好印象な一面でした。自然体の優しさで行われた海浜旅行や花火も、成仏と消えることの違いを知らない時点では最後まで笑うために必要な事だったと思います。

 しかしながら、暗闇の中に明穂を放置しないためにはどうしても成仏させなければならない事が珠美の口から明らかになります。主人公は明穂を無視することで明穂が自発的に成仏するよう望みますが、これはどうも不自然のように感じました。やはり、消えることの意味を教え成仏するように頼む方が先に来るべきでしょう。

 一方的に大嫌いと言われた明穂は、ただ傍にいたいという想いを優先しました。明穂が成仏したと勘違いした主人公は、積極的に声を掛けてくれる委員長で寂しさを紛らわせます。ここで勿体ないと思ったのは、事前に明穂視点を挟むことで未だ成仏していないことを明かしてしまった場面ですね。ジゼルが消えかけて見えない明穂にじゃれている様子を何の予告もなしに見ていたら、より物語に引き込まれていたことは想像に難くありません。

 また、幽霊電話による再会は良い演出だったと思います。欲を言えば、ここはお互い姿が見えないままで会話が続いた方がさらに良かったと感じます。しばらくした後に赤い糸で結ばれ、最後に姿を現してそのまま約束を交わして成仏する。全ての要素を詰め込むにしてもそんなエンディングで十分だったでしょう。

 なお、エピローグの転生はご愛敬なのであまり深く考えない方が良いのでしょうか。あえて希望を述べるのならば、丘に立っている主人公の後ろから明穂(10歳)が「おにいさん」と声を掛ける程度のところでやめておくべきでしょう。奇跡は予感させるもので、明示しない方が美しいのです。
  • お互いに補完
     主人公の主体性の無さは、今まで明穂の望みを最優先で実行してきたためでしょう。
  • 優しさ
     QOLあるいは終末医療になぞらえた死生観はとても好意的に受け止めました。
  • 主人公
     明穂と巡り会う確率を上げるために、医療の中でも小児科医を選ぶところは流石ですね。転生後の明穂(10歳)とどのように付き合うかだけでなく、彼女の家族や自覚する前の明穂の気持ちはどうなるのかという問題もあります。転生間隔や意識の主体性については2例しか描かれないので何とも言えません。
2.6. もしも明日が晴れならば、海に行こう!!
 本作のタイトル「もしも明日が晴れならば」は、綺麗なタイトルでありながら本編の内容とも密接に結びついていました。

 この雨が止んだらあの丘へ登ろう。それは昔の約束を果たすために。あるいは彼女が待っている空に近づくために。そして、晴れた心の虹を見つけるために。

3.1. 心にとどめておきたい言葉

人間いうんは、いっつもろくでもないことばっかり考えとるもんや。
嫌なことがあれば、腹も立つ。 思い通りにいかへんと、誰かを恨みたくもなる。
…そういうもんやから、しゃあないと思う。 嫉妬くらい、当たり前の感情や。
好きなもんは、奪い取りたい。 そのくらい思ってもええやんか。
湊川 珠美

3.2. 関連項目
  1. 外部記事

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Last updated: 2012-12-01
First created: 2012-11-24