『Phantom INTEGRATION』感想

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ジャンル ハードボイルド ADV
発売日 2004/09/17
Phantom INTEGRATION Nitro The Best! Vol.1
評価点
80 / 100
最大瞬間風速 キャル(85/100)
総プレイ時間 14.0時間
主人公 8/10
お気に入り キャル・ディヴェンス
ユーザビリティ 7/10 7/10
グラフィック 7/10 7/10
ムービー 7/10 7/10
主題歌 7/10 7/10
BGM 8/10 8/10
ストーリー 8/10 8/10
演出 8/10 8/10
感動 7/10 7/10
読後感 8/10 8/10

(評価点や作品に望むこと等については「レビューポリシー」をご参照ください。)


0. まずは一言

大きな感動や絶句する場面は少ないものの,恒常的に続く緊張感と先の見えない展開に一息つく場がなかなか見つかりませんでした.

(上記の一言だけで満足なのですが.ただただ物語を消費するのも勿体ないですので,少しだけ感想を続けます.)


Attention!!

この感想はゲームをクリアした人に向けて書かれています。
まだゲームをクリアしていない人が読むと、作品の面白さを損なうことがありますので、ご注意ください。

1. 作品全体について(ネタバレ小)

1.1. 物語世界へ一気に引き込むテキストとシナリオ

この作品の良さはひとえにテキストとシナリオにあります.ゲームを始めた瞬間から緊張感に襲われ一気に引き込まれました.テキストは硬質ながらも焦燥や陰鬱など文芸的な重さを強調しすぎないことで,作品をエンターテインメントに作り上げています.まさに見せ場だけを繋いでいく構成により,淡々と簡潔に進む物語でありながら先の見えない展開に一息つく場がなかなか見つかりませんでした.

また,アメリカ西海岸の暗黒街におけるマフィアを題材にした世界観は,銃器の訓練や暗殺の仕事がリアリティを感じる程に描かれていました.悲しみの負の連鎖も,安易な結末を用意せず切なさの残るハッピーエンドを示してくれました.

惜しむらくは,エレン・キャル・美緒のルートである3章に共通部分が大変多く,エンディング(エピローグ)を除き各ルート間でほとんど変化がないことでしょう.最後の戦闘についても,主人公側が窮地を脱するための戦法が戦法がまったく同じであり,後のルートほど面白みがなくなってしまいました

  • 戦法がまったく同じ

    ファントムの3人は皆サイス=マスターの教育を受けているため,殺しに関する考え方は非常に似通ったものになる可能性は確かにあります.とはいえ,それではちょっとつまらないですよね.

  • 面白みがなくなってしまいました

    それ故に,好きな人物のルート(あるいはメインヒロインのエレン)を先に読んでしまうのが適切かもしれません.

1.2. 意志の力で敵を打ち破る主人公 (zwei)

マフィアの連盟組織「インフェルノ」における最強の殺し屋「ファントム」が1人,吾妻玲二が本作の主人公です.仕事を簡単にこなす彼には(不謹慎ながら)格好良さを感じます.物語の後半ではヒロインを守れなかったことを嘆き,少し優しすぎる彼は精神的な弱さを見せます.最後には自らの実力と意志で未来をつかみ取りました.

  • インフェルノ

    LAを取り仕切るアイザック=ワイズメルはクロウディアの陰謀であっさり殺されてしまいますし,コロンビアの麻薬王レイモンド=マグワイアもただ冷静な人物というだけでいいところがありませんでした.

1.3. 綺麗な新規絵と優れたBGM

キャルや美緒の笑顔など新規に追加されたと思われる一枚絵はとても素晴らしく,唯一の萌えポイントでした.あまりにも高いその品質には,旧版の立ち絵やCGも描き直して欲しくなるほどでした.

音楽面ではBGMがシナリオの雰囲気をよく出しており,戦闘シーンを彩る「FIGHT」「SEARCH AND DESTROY」や重厚な「DESERTSCAPE」「CRIMINAL」,哀しい「REQUIEM」など,優れた楽曲が豊富でした.

本作は原盤が2000年発売ということもあり音声が収録されていません.シナリオ(テキスト)やBGMが大変素晴らしかったのでCharacter Voiceがなかったことが惜しまれます

1.4. 銃器の演出が充実しています

本作の大半を占める戦闘シーンでは,銃声やmuzzle flash(銃口炎)などのエフェクトがとても充実しています.さらには,主人公がどの銃を使用するか選べ,プレイ後に銃の解説まで読めるなど付いているなど銃器に関してはおかしな程充実していました.


2. シナリオや各ヒロインについて

平穏に生きられる場所を失った亡霊(phantom)たちが人間としての拠所を取り戻すお話でした.

アメリカ西海岸を舞台にした前半部では,暗殺者としての技術を身につけていくプロローグやクロウディアたちの幾重にも複雑に重なった陰謀や駆引きなど大いに楽しむ事が出来ました.

後半の篠倉学園編では過去の罪に苛まれる主人公の死生観と,そんな彼を愛する3人のヒロインの戦いが描かれます.全て純愛でありながらその本質は,依存するエレン,憎悪するキャル,恋慕の美緒と三者三様でした.どの結末も一抹の哀しさがあり良い余韻を伴ったハッピーエンドでした.

以下,各キャラクターたちの感想を少しだけ.

  • 過去の罪

    インフェルノに居場所が特定された時点で逃亡を開始するべきなのですが,キャルへの負い目のため行動することができませんでした.彼らが次善の策として取ったのが美緒を人質とすることでした.

2.1. クロウディア・マッキェネン

優れた美貌と豊満な体を武器に男性を手駒とするクロウディア.陰謀と裏切りを繰返しインフェルノ幹部の地位に上り詰めた彼女は,まさに悪女です.物語冒頭から玲二に優しさを見せつつも,冷酷に実の弟や恋人を切り捨てていく二面性が見られます.その心理はなかなか理解できる物ではありませんでした.またまだ私はお子様のようです.

リズィ・ガーランド

インフェルノの戦闘部隊指揮官にして,とても優しい良い人.ツヴァイやドライのことをよく気遣ってくれました.特にドライについては,自身のミスが彼女を暗殺者へと歪ませるきっかけとなったので,ドライに撃たれるその時まで親身に接していました.

2.2. キャル・ディヴェンス (drei)

インフェルノに破壊されたロフト で玲二を待ち続け「…うそつき」と呟く切ない場面が印象的なキャル.最高に可愛かった2章での笑顔が,3章での憎悪を描くためだったと思うと辛いものがあります.

バッドエンドでは,復讐を果たしたキャルの虚無感や,その彼女を殺したエレンの孤独感など,負の連鎖と復讐の不毛さが示されていました.

2.3. 藤枝 美緒

玲二のファントム時代にほとんど関わっていないため,美緒にはあまり愛着が沸きませんでした.ただ,彼女が玲二の空を眺める姿に惹かれるエピソードなど恋愛のきっかけについてはよく描かれていたと思います.キャルに軟禁されたときや,玲二と別れ1人日常で生きるエピローグなどで,彼女の精神的強さが際立っていました.

志賀 透

命を懸けて美緒の兄・大輔との約束を守り通した格好良い人です.

2.4. エレン (eins)

基本的に無表情のエレン.ショッピングモールで恋人を演じたときの変わり様には,本作にCVがないことを悔やみました.

エレンという新しい名前をもらってからの心の成長がよく描かれていたと思います.学園屋上でのサイスとの決別は名場面でした.自分の意志で初めて人を殺したエレンは,今まで律してきたアインとしての拠所を全て失い,壮絶な虚無感に囚われてしまいます.しかし,玲二の努力の甲斐あって何とか故郷の地モンゴルを探り当てることで,エレンとしての心の支えに気付くことができました.

サイス=マスター

本作で最高の悪人であり,負の連鎖の元凶であるサイス.常に陰謀を張り巡らす嫌な奴ではありましたが,不快ではなくむしろ彼が登場する度に大いに楽しんでいました.

少女を洗脳して兵器にすることが趣味という変態の彼.お得意であるはずの洗脳術も,Zahlen Schwestern(ツァーレン シュベスタン:数の姉妹)を人数で劣るファントムたちに殲滅されてしまう辺りその腕はあまり良くなさそうです.志賀の「あんたのファントムは,最後に裏切るのがジンクスなのか?」という怒りのセリフには大爆笑しました.

  • サイス

    名前の由来は「死神の大鎌(scythe)」からか.


4. 関連項目

  1. 関連作品の感想
  2. 外部記事

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Last updated: 2014-02-08
First created: 2014-02-01