『初恋』感想

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ジャンル 恋愛アドベンチャー
発売日 2002/10/25
評価点
73 / 100
最大瞬間風速 小桃(80/100)
総プレイ時間 23.5時間
主人公 6/10
お気に入り ココ・夏野・パルフェ
ユーザビリティ 7/10 7/10
グラフィック 7/10 7/10
ムービー -
主題歌 7/10 7/10
BGM 7/10 7/10
ストーリー 7/10 7/10
演出 7/10 7/10
感動 7/10 7/10
読後感 6/10 6/10

(評価点や作品に望むこと等については「レビューポリシー」をご参照ください。)


0. まずは一言
 果物の名前を冠するヒロインとの純愛はまずまず楽しめました。しかし、これが『初恋』を描いたものなのかと問われると、その特殊な状況にはかなり疑問が残ります。

Attention!!
この感想はゲームをクリアした人に向けて書かれています。
まだゲームをクリアしていない人が読むと、作品の面白さを損なうことがありますので、ご注意ください。

1. 作品全体について(ネタバレ小)
1.1. 『初恋』をタイトルに冠してはいるが……
 本作はタイトルそのままに「初恋」をテーマに描かれた作品ですが、プレイ前に抱いていた印象とはどうも異なりました。確かに、自分の気持ちにみんな真っ直ぐであり、意中の人に焼きもちを焼き、見ている側も恥ずかしくなるような甘酸っぱい場面も数多く描かれています。しかしながら、お互いを意識してドキドキし、告白もなかなか出来ず悶え、両想いになってから手も握れないといった、ステレオタイプな微笑ましい初恋をイメージしていると、その齟齬に苦しむことになります。

 さらに、タイトルからは決して想像できない様々な設定が登場します。読者を驚かせるこれらの展開が悪いわけではありませんが、その背景説明がほとんどないことに勿体なさを感じます。ただし、透けた立ち絵で登場するヒロインがいるなどファンタジー色が強い作品であることを冒頭から予告していました。そのため、リアリティの低さはそこまで気になりませんでした。
  • 齟齬
     告白即えちぃなんて初恋ではないです。大抵のゲームは「えっちがあればユーザーが喜ぶ」と思われているので、想定ユーザーではない身としては辛いです。
1.2. 中学生の頃を思い出して
 実際のところ、10代前半までに初恋を経験する人が大多数だと思います。それに合わせ、聖桜館学園に通う彼らを中学生として見た方が物語に入りやすいかも知れません。野々原幹さんが描いた可愛くぷにっとした幼いヒロイン達も、その読み方を後押ししています。それに対応させるためなのか、主人公も問題処理能力に欠けるとても頼りない人物として描かれていました。

 ここで、稔ちゃんについて少し弁護しておきましょう。この主人公は、ひたむきに恋愛し直情的な行動をたびたび見せます。しかし、初恋の初々しさを描くという意味ではそれほど悪くないのでしょう。周囲の状況も主人公にとってかなり都合がいいように動くことは否めません。それでも、彼も女の子のために決意を見せているところを忘れてはいけません。
  • 中学生
     もちろん、初島家の居住年数などからは中学生でないことが示されます。
  • とても頼りない人物
     ヒロイン達に頼りなさを指摘されるほどです。
1.3. その他(音楽やシステムなど)
 17曲の楽曲には綺麗な曲が多く、特に心が沈んだ場面で流れる「壊れやすい心」が最高でした。システム面では、見た目のデザインは優れているものの、セーブ&ロード画面を開くのにステップ数が多く、またその数も20しかないところが残念でした。

2. 個別シナリオやヒロインについて(ネタバレ大)
 主人公が恋を意識した後に出会った女の子は、特殊な立場の女の子ばかりでした。しかし、彼らの拙い盲目さは、振り返って初恋と呼ぶに十分値するものだったと思います。おそらくこれは、主人公の妹やその親友を中心としたグループの日常会話(およびその雰囲気)を満喫しつつ、物語が破綻するギリギリのギミックを楽しむ作品なのでしょう。
  • 特殊な立場の女の子
     義理の妹、人形に魂を定着させたお嬢様、幽体離脱していた病弱ボクっ娘、転生してまで想い続ける先輩、赤道付近にある国家の王女様の5人。
2.1. 初島 杏(7/10)/ ワナを仕掛ける本当の目的
 お兄ちゃんをからかうことを生きがいとしている杏。彼女の「えへへ……ワナだよ、お兄ちゃん」は、構って欲しさと好意の表れであり、自らの気持ちを素直に言動に表してくれているとも言えます。怒ることで真剣に向き合っていることを示して欲しい杏と、これ以上落ち込ませたくない稔のすれ違いも良かったです。

 ところで、2人の恋人関係が真っ先に母にばれて猛反対されることも、なかなか面白いところだと思います。そして、これまでの子育てや離婚問題にまで言及されました。兄の決意表明と妹の説得により元通りとなりましたが、意外と現実的な論点を持ってきました。

 さらに、義理の兄妹であると明示しなかったことも注目に値する事項でしょう。2人の関係をこのシナリオでは「同い年」「生まれた月だって一ヶ月くらいしか違わない」としか明らかにせず、周囲も実の兄妹として扱います。これは表現手法としてなかなか面白いと思いました。(性的関係を結んでしまったとはいえ)最後まで仲が良すぎる兄妹としての関係(距離感)を崩さなかったところもポイントです。
  • 構って欲しさ
     両親が自分に向き合ってくれない事への寂しさの表れでもありました。
  • これまでの子育て
     互いに相手を批判する両親や、両親共働きにもかかわらず家事(炊事、掃除など)が全く出来ない子供達を見ていると、子育てには失敗しているように見受けられます。 
  • 兄妹
     柚純に「兄妹で同じクラスなんて、珍しいね」と指摘されるわけですが、このセリフの意図が掴めないで困りました。 
  • 「同い年」「生まれた月だって一ヶ月くらいしか違わない」
     重複子宮による二卵性双生児という可能性がないわけではありません。しかし、花梨ルートにおいて、主人公の子供の頃のアルバムにあるところを境に杏が登場するようになります。この事実がなければ義理の兄妹という判断は意外ときわどい推定なのです。それでも、腹違いの可能性は残り続けます。 
2.2. 高鷺 花梨(7/10)/ 名前が覚えられないわけ
  プチプチつぶしが大好きな花梨。記憶に無い恋する気持ちに戸惑い、他の女の子(妹でさえ)と一緒にいると焼きもちを焼く彼女は可愛かったですね。屋上でお弁当をあ~んと食べさせてみたり、他の女の子を名前で呼ぶと不機嫌になってみたりと、初恋らしさが出ていました。

 終盤まで王道路線を貫いていたわけですが、それを覆すかのように緑色に透けるガラスの腕を見せられた瞬間は、この作品の中で最も驚いたシーンでした。振り返ってみれば、伏線となる事柄もいくつかありました。
  • 名前を覚えられないなど、強い興味があることや習慣しか記憶に残らない
  • 肝試し中の人体模型や人形の怪談
  • 恋愛に対する常識の欠如
  • ピアノが上手く引けなくなる(→恋煩いだけではなかった)
呪術による人形という手法は全くもって反則の感が強いですが、結末に繋がるエピソードが十分に盛り込まれていたので、それほど抵抗感はありませんでした。最後の指輪については、彼女の意地悪な性格も反映していたため、それなりに気に入っています。
  • お弁当
     彼女自身は料理を作れないわけですが、誰の手作り弁当なのでしょうか。 
  • 記憶
     記憶に刻みつけるためのえっちという、本作で唯一意味があるえちぃシーンだった思います。「花梨みたいな女の子に触られたら」を「花梨に触られたら」に訂正させるところも、嫉妬深さがうかがえます。 
  • ピアノが上手く引けなくなる
     合唱コンクールの結末はどうなったのでしょう。ここを描かないと、高田さんの存在理由がなくなってしまいますが……。
  • 全くもって反則
     「聞きかじった呪術のたしなみ」でどうにか出来てしまうこのお父様は何者でしょうか。妻や娘への愛情を、正気を保ったまま持ち続けるのは大変だったでしょう。
2.3. 椎名 柚純(7/10)/ 嫉妬相手のパラドックス
 しゃっくりが可愛いボクっ娘の柚純ちゃん。論理的担保が一切無いのは残念ですが、幽体離脱していた自分自身に嫉妬していた結末はとても興味深かったです。

 徐々に幽霊状態の柚純に惹かれていく描写がよかったこともあり、急に彼女がいなくなってクラスメイトとして転入してくるのは面白かったですね。他人の空似ではごまかしきれない彼女にストーカーまがいな事をしてしまう主人公は、確かに褒められたものではありません。しかし、彼も自分勝手な振る舞いを反省しており、初めての恋に前が見えなくなっている描写で許せる範囲には収まっていると思います。
  • 論理的担保が一切無い
     柚純エンドを迎えなくても幽霊状態の彼女に1度は出会うイベントの存在が説明出来ないですよね。祠を最初に教えたのは誰かという問題については起点の存在しないループです。
  • 自分自身に嫉妬
     浮気に見えて同一人物であり、初めてに見えて2回目というのはなかなか描けないです。ちなみに、本当の初体験においてブルマでふたをする発想が大好きです。
  • 幽霊状態
     秘密基地を探していて家に帰れなくなったとき助けたこともあるそうですので、かなり幼少の頃から見守っているのでしょう。ただ、妹が何回も彼女を見ていたにもかかわらず兄に教えないのは不自然だと思います。
  • ストーカー
     「ストーカーという文字は恋する乙女と読みます」(『それは舞い散る桜のように』)
  • 許せる範囲
     病弱な彼女を河原や祠に連れ回すのは許していいものか微妙なラインかもしれません。
2.4. 桜井 小桃(7/10)/ ようやく実った初恋
 大福が大好きでたまらない小桃先輩。彼女が全ての記憶を思い出している状態で稔と接していることを念頭に読み返すと、再開からラブレター、肝試しまでの一喜一憂する気持ちがよく分かります。転生を性格や記憶の上書きではなく、無意識下で惹かれあった後に前世の記憶を思い出すという手順で描かれているところも好印象。しかし、現在の(転生後の)彼/彼女の何処が好きになったかを表現し切れていなかったのは残念に感じます。それでも、どうしてこんなことに……と感じるエピソードが連続は十分に楽しめました。

 転生後の小桃については、もはや予定調和でありご愛敬な要素にあふれています。とは言いつつも、大正時代から長い輪廻を経て3度目の初恋にしてようやく一緒になれた2人を応援せずにはいられません。ひとまずは、卒業後まで派手なことは我慢してくださいね。

  • 前世の記憶を思い出す
     前世の記憶を稔が思い出さず好意も示されなかったときはあっさりと身を引く小桃先輩。
  • 転生後の小桃
     稔(25)が新人教師として赴任し新入生の小桃(12)を受け持ちます。中学2年生だった稔が12年後に大学院(修士)を修了し学園に戻ってくると考える方が自然です。陽子が先輩なのは、稔がストレートで大学を卒業出来なかったのでしょう(高校相当だと31と15の関係になります)。
  • 予定調和
     1度目の転生に70年程度掛かったのに、2度目の転生で再び平成の世に生まれてくるのは不自然ですよね。
  • ご愛敬な要素
     「私はまだ変身を2回残してる」を彷彿とさせる更なるロリ化でした。乳歯が生え替わっていないってどういうことですか。あと、えちぃシーンも「おちんちんの先ってまるいから、おなかのどのあたりまできてるかよくわかる」など、心を突くセリフもありますね。
  • 大正時代
     大正12(西暦1923)年の関東大震災よりの輪廻。なお、聖桜館学園も大正時代から歴史を持つ学校法人のようですが、彼らもここに通っていたことがあるのでしょうか。 
 なお、このルートでは二木の暴走が顕著でした。親友(であったはず)の稔への暴行や小桃先輩への迫り方はストーカー以外の何者でもありません。杏ルートにおける彼の「振られたくらいであきらめるようじゃ、ひとすじって言わないんだよ!!」といった言葉は、初恋ゆえの想いの強さを表していて好きでした。だからこそ、前世の(無意識下の)記憶により盲目的になり、ここまで嫌な人物となってしまったのは正直残念です。転生にそれこそ命を懸けた二木が小桃と最後まで結ばれなかったのは可哀想にも思えますが、やはり自ら死を選んだ制裁というものなのでしょう。
  • 稔への暴行
     二木に小桃先輩と付き合うことにしたことは先に言っておくべきだとは思います。ただし、ラブレターを友人に託す時点で、たとえ抜け駆けされたとしても二木に文句を言う権利はありません。両方の意見を聞いてなお、稔を味方したくないと言った鎌田もどうかと思います。 
  • 初恋ゆえの想いの強さ
     その意味では、転生を信じて屋上から身を投げた彼を責める気はありません。 
  • ここまで嫌な人物
     二木だけではなく小桃先輩や陽子ちゃんに大きな既成概念が出来てしまいますので、このシナリオを1番最後に迎えることが最良かも知れません。 
西村 陽子 / 初恋は実らない
 親友の兄を一途に想う陽子ちゃん。好きな人の恋を応援できるお人好しな彼女は、とても損な役回りを務め上げました。妹の昔からの親友という「ごく普通のクラスメイト」である陽子ちゃんのシナリオがないのは、初恋は実らないものであるという一般論を暗に示したいのでしょうか。

 小桃先輩と二木の死後に、身体を開いて初島を慰めるのは唐突かもしれません。しかし、極端に落ち込む彼を見て、もしかすると彼も死んでしまうのではないかと考えることはそれほど不自然ではないでしょう。陽子ちゃんはお互いの傷を舐め合っているだけと自覚していましたので、けじめを付ける日まで描いて欲しかったとは思います。
  • 暗に示したい
     主人公の名前「稔(みのる)」は、彼の初恋が実る事に通じています。
2.5. ココ・夏野・パルフェ(6/10)/ 母の想い出を訪ねて
 無邪気で純真すぎるココちゃん。母の想い出を見つけるために、学業とメイドを頑張る彼女がとても可愛かったです。

 彼女のお話は高鷺家でのアルバイトや屋上での調理実習など、他キャラクターの意外な一面を見られるエピソードもありました。全体としてはやや都合の良すぎる展開が続くものの、ファンタジーにあふれた本作ではドタバタ喜劇として楽しめるものでしょう。ただし、ココちゃんとの交際出来るようになったのは、王城から彼女が再び脱走する賭けのおかげというのは少しだけ心残りです。稔が国王(父親)に母親について説教したことが大いに効いているとはいえ、やはり主体性に欠けるのは残念でした。
  • 高鷺家でのアルバイト
     ココちゃんに優しい花梨お嬢様なのでした。ちなみに、一緒にココちゃんとお風呂はさすがにどうかと思い笑ってしまいました。
  • 調理実習
     高田やその取り巻き達が、ただ難癖を付けるだけの存在ではないことを示す意味のあるエピソードです。
  • やや都合の良すぎる展開
     4月に季節外れの大型台風が来たり、何故か無事だった写真を野良犬が偶然拾ってきたりなど。
  • ドタバタ喜劇
     えちぃシーンでは王女様っぽく命令させる3択の選択肢があるなど、そちらの面でもお遊びがありました。


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Last updated: 2012-12-15
First created: 2012-12-08